防災研究

防災への工学的アプローチ

橋本が開発した画像計測技術は「距離50mにて誤差1mm」で対象座標を計測できるとともに,動き計測・連続時間計測・多数点同時計測が可能で,低コストです。つまり,遠方対象の動きを高精度に計測できます。

この技術を活用して,擁壁ブロック・岩・樹木等の微小な動きの計測システムを試作し,その計測結果から土砂災害発生の予兆を検知,警戒情報を取得するシステムの開発することを研究目的としています。つまり,従来カメラで計測されている分野に3次元計測を導入し,その計測結果と土砂災害との関連を明確にすることで土砂災害を予測します。本研究の成果は,早期で正確な避難につながると考えられる。また,計測データは公共性が高いため,公開して防災研究の進展に大きく寄与します。

さらに,この計測技術は,天然ダムの危機管理,掘削面の崩壊予測など,広い分野で応用できます。

研究の背景

研究動向及び位置づけ

計測対象,重要性

政府広報オンラインに「土砂災害の危険箇所は全国に52万箇所!」,「土砂災害の発生件数は年間約1,000件」とあるように,土砂災害は身近でかつ大変危険な災害です。このため,土砂災害の予兆検知に関する技術の確立は緊急かつ不可欠です。 

これまでに防災については様々な研究が進められています。例えば,水分計,傾斜計,GPSを用いた法面計測,衛星画像を用いて地形変化等の研究等を挙げらます。また画像を用いた研究として,特定の箇所の3次元計測については試みがあるものの,計測精度・計測範囲・計測装置の複雑さ等から,屋外・遠距離での高精度計測の例は見当たりません。

次の図のように,広範囲かつ高精度を実現する計測方法の実用化を目指しています。

既存計測技術との関係

計測技術

画像を用いた3次元計測において,ステレオ計測は基本かつ主要な方法です。しかし,ステレオ計測には,対応点誤差・量子化誤差・キャリブレーション誤差などの誤差要因があり,既存計測技術では遠距離における計測精度が不十分とはいえないのが現状です。具体的には,ステレオ3次元計測では,「カメラ-対象間距離」/「カメラ-カメラ間距離」という「ステレオ比」(と呼んでいます)が計測精度に強く関係し,この比が大きく(例えば,カメラ-対象間距離が長く)なると計測精度が低下してしまいます(既存のステレオ3次元計測では多くの場合,このステレオ比が数倍程度までで計測が行われます)。

これに対し,橋本が開発した技術では,このステレオ比が20倍程度でも従来技術より一桁以上高い精度を実現できます。

参考までに,現在行われている地表や法面変動の計測手段との関係を次にまとめます。

  • 干渉SAR:衛星画像等を用いて広範囲に計測でき,誤差数センチ(変動量)と素晴らしい計測が可能である。しかし,衛星の周期から連続計測ができず(数十日に1回),このため,地上の擁壁や法面の変動,谷の堆積土砂等の計測には適さない。
  • GPS:計測箇所に受信機の設置が必要である。これに対して,画像計測は広範囲の計測箇所を同時に計測可能。
  • 3次元計測:レーザ計測や画像計測(計測対象にマーカーを用いる方法)が各種提案されている。
    以上に対して,提案方法は,マーカーレス(自然マーカー)計測,計測精度が高い,動きの計測(振動計測)が可能である。